地獄
仏教における地獄とは、現世で悪行を重ねた者が死後に落ち、責め苦を受ける場所を指す。閻魔王が生前の罪を裁き、獄卒の鬼達が刑罰を加える。
日本における地獄観は『古事記』や『日本書紀』に記される黄泉国の観念に、インド仏教の地獄観、中国の冥府思想が結びついて発展を遂げた。
地獄には様々な種類があり、大きく八熱地獄(八大地獄とも)と八寒地獄に大別される。八熱地獄とその各四方に存在する計128の十六小地獄を合わせて一百三十六地獄という。
海底監獄〝インペルダウン〟は、この仏教的な地獄の要素を多分に含んでいる。
8つの地獄から成る八熱地獄・八寒地獄に対し、〝インペルダウン〟は6つの地獄から成っている。いずれも下層に行くほど罪が重く、より苦しい刑罰を受けることになる。
LEVEL1〝紅蓮地獄〟
LEVEL1〝紅蓮地獄〟では、葉が刃物の様に切れる〝剣樹〟と、針の様に体に刺さる〝針々草〟によって、囚人達は切り裂かれる。

この地獄の名は、寒さから皮や肉が破れて血を流し、紅蓮華のようになる、八寒地獄の第七・鉢特摩と第八・摩訶鉢特摩(それぞれ紅蓮地獄と大紅蓮地獄)に由来する。
また、八熱地獄の第三・衆合地獄には、刀葉樹という、葉が鋭い刃で出来た樹木が並ぶ刀葉林(針の山とも)、第四・叫喚地獄の小地獄・剣林処と大剣林処には、剣樹の林が存在する。
針の山の頂上では、絶世の美女が手招きをしており、亡者達が苦しみに耐えて何とかその山を上ると、美女は下に移動していて、下れば上に移動している。
これが繰り返されるために罪人達は永遠に美女に出会うことは無い。〝インペルダウン〟にハンコックが現れたのも偶然ではない。

LEVEL2〝猛獣地獄〟
LEVEL2〝猛獣地獄〟では、バシリスク、マンティコラ、スフィンクスなどの様々な怪物達が解き放たれており、囚人達は日々追い回され、死の恐怖に怯えることになる。

仏教における地獄にも、様々な獣が解き放たれている。
亡者たちは、小地獄・屎泥処や金剛嘴烏処で金剛の嘴を持つ鳥に体を食い破られ、不喜処では熱炎の嘴の鳥・犬・狐などの獣により、肉や骨の髄まで食われる。
等喚受苦処では燃える牙を持つ犬に食い殺され、旃荼処では烏・鷺・猪などが罪人の眼球や舌をつついて抜き出される。
地獄においては、責め苦によって死んでも涼風が吹くことで生き返り、再び責め苦が繰り返される。これこそが八熱地獄の第一・等活地獄の名の由来でもある。
LEVEL3〝飢餓地獄〟
LEVEL3〝飢餓地獄〟では、LEVEL4〝焦熱地獄〟から立ち上る熱と水も食料もほど与えられないという責め苦を受ける。

仏教の輪廻思想において、衆生(生命のあるもの全て)がその業に従って死後に赴くべき六つの世界を六道といい、地獄道はその1つにあたる。
その六道の1つ餓鬼道は、生前の悪行や、物質的、特に食物についての欲望の強い人間が死後に落ちる世界である。
そこに住む餓鬼達は、咽喉が極めて細く、膨れた腹部を持つ姿で表される。彼らが食物を口に近づけると全て炎となり、彼らは常に飢えと渇きに苦しむことになる。
LEVEL4〝焦熱地獄〟
LEVEL4〝焦熱地獄〟は巨大な鉄釜の中にあり、囚人達は煮え滾る血の池と燃え盛る火の海によって焼かれる。

八熱地獄の第六・焦熱地獄においても、罪人達は熱鉄や鉄釜の上に置かれて身を焼かれ苦しめられる。こちらも中央に血の池が存在し、さらに下層には第七・大焦熱地獄がある。
LEVEL5〝極寒地獄〟
LEVEL5〝極寒地獄〟はその名の通り、極寒の地獄である。

八熱地獄のそばにある八寒地獄もまた、寒冷による責め苦を受ける8種の地獄である。
頞部陀・尼剌部陀・頞唽吒・臛臛婆・虎虎婆・嗢鉢羅・鉢特摩・摩訶鉢特摩と呼ばれるこれらの地獄は、寒さのあまり身や声が変わることから名付けられた。
LEVEL6〝無限地獄〟
LEVEL6〝無限地獄〟における具体的な責め苦の内容は描かれていないが、その名から察するに、囚人達は無限の地獄を味わうことになるだろう。
度を超える残虐な事件や政府に不都合な事件を引き起こした、死刑または終身刑を宣告された囚人達が収容され、その存在は世間の人々も囚人さえも知らない。

八熱地獄の第八・無間地獄もまた、最下底に位置する地獄である。仏教において最も重い五逆罪を犯した者が落ち、間断なく責め苦を受けることからその名が付いた。
閻魔とアヌビスと獄卒
インペルダウン編当時の〝インペルダウン〟の看守長マゼランと副看守長ハンニャバルもまた、地獄と関係している。
死者の生前の行いを裁き、罰を与える閻魔王は、犯罪者の罪を裁き、時には自ら刑を実行する絶対的な権限を持つ看守長のマゼランそのものである。

ハンニャバルの被り物にはジャッカルの頭部と人間の身体を持つという『エジプト神話』における冥界神アヌビスが取り付けられている。

般若とは、サンスクリット語で「仏の知恵」を意味し、大乗仏教において菩薩の完成徳目の最後に「般若波羅蜜」は、知恵の完成による悟りの境地を指す。
能面の1つとして知られ、2本の角に大きく裂けた口を持つこの鬼女の面は、女性の憤怒と嫉妬を表している。ハンニャバルもまた、看守長マゼランに対して激しく嫉妬していた。

〝インペルダウン〟には極卒獣と呼ばれる動物系能力の覚醒者が存在する。これは、地獄において様々な責め苦で亡者を苦しめる極卒という異形の鬼に由来する。

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