十字架
〝白ひげ海賊団〟2番隊隊長を務めたルフィの兄ポートガス・D・エースは、〝バナロ島の決戦〟において、〝仲間殺し〟の罪で逃走中の〝黒ひげ〟に〝十字火〟という技を放った。

十字架はイエス・キリストの磔刑に使用された刑具で、キリスト教の象徴である。
また、「十字架を背負う」という言葉は「耐え難い苦難、重い負担、消えることのない罪をいつまでも身に持ち続ける」という意味があり、罪を犯した〝黒ひげ〟の背負う十字架を示唆している。
〝白ひげ海賊団〟の海賊旗は十字架のような骨が交差した形をしている。つまり、この刺青を背中に入れたエースもまた十字架を背負っている。
ゴール・D・ロジャーの息子として生まれたエースは、〝海賊王〟の息子という罪を背負って生きた。彼が欲したのは「自分は生まれてきてもよかったのか」という問いに対する答えだった。

エースは「頂上戦争」の最中、エース救出のために戦う多くの仲間を目の当たりにしたことで、求めた答えに気づかされ、皮肉にも背中の十字架は〝赤犬〟によって焼かれることとなった。

※余談だが、〝白ひげ海賊団〟の海賊旗は元々「ハーケンクロイツ」というナチス・ドイツのマークをモデルにしていたという。このような大人の事情による方向転換から、ここまでの〝深み〟を描いた尾田栄一郎氏には脱帽せざるを得ない。
ユダ
後に〝黒ひげ〟と名乗るマーシャル・D・ティーチは〝ヤミヤミの実〟を奪うために4番隊隊長サッチを殺害して〝白ひげ海賊団〟を裏切った。彼はエースが隊長を務める2番隊の隊員だった。
イエス・キリストもまた、自らの弟子であるユダに裏切られ、磔の刑に処された。

そして、船長の〝白ひげ〟エドワード・ニューゲートもまた、頂上戦争において傘下の海賊スクアードの裏切りにあっている。

エースと〝白ひげ〟は〝黒ひげ〟というユダの裏切りを引き金にして、頂上戦争で非業の死を遂げたのである。
愛
キリスト教の聖典『新約聖書』の一説に「己を愛するがごとく、汝の隣人を愛せ」という言葉がある。「自分を愛するかのように、あなたの隣人を愛しなさい」という意味だ。
エースが死に際に語った言葉も「愛」だった。

エース救出のため、マリンフォードに現れた〝白ひげ〟もまた、「愛」という言葉を使っている。

また、〝白ひげ〟は自らを刺したスクアードを「愛」という言葉を持って許した。イエスもまた、ユダの裏切りを知っていたにも関わらず、それを許したとされる。

頂上戦争は「愛」に始まり、「愛」に終わったのである。
マルコ
〝白ひげ海賊団〟1番隊隊長はマルコという人物であるが、キリスト教の経典『新約聖書』には『マルコによる福音書』というものが存在する。
「福音書」というのはイエスの言行を記した文書の名称で、『新約聖書』に取り入れられた4つの福音書の中で『マルコによる福音書』は現存する最古のものとされている。
マルコはワノ国編における〝鬼ヶ島討ち入り〟にて、〝ルナーリア族〟である百獣海賊団〝大看板〟の〝火災のキング〟(アルベル)を見て、回想する。
かつて〝白ひげ〟は「赤い壁の上に『神の国』があった」という言い伝えをマルコに話した。
『マルコによる福音書』1章には「時は満ちた、『神の国』は近づいた。悔い改めて福音を信ぜよ」というイエスの最初の宣教の言葉が記されている。
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