太陽の神
ルフィの食べた〝悪魔の実〟の覚醒は「更なる〝腕力〟と〝自由〟を与える」といいます。
〝悪魔の実〟が覚醒すると、その能力は能力者以外にも影響を与え始めるようで、ルフィが〝ニカ〟の能力を覚醒させた時には周囲がゴムのようになっていました。

そしておそらく、〝ニカ〟の「覚醒」は〝ゴム〟の性質だけでなく、〝腕力〟と〝自由〟も他に影響を与えています。
ルフィが「覚醒」状態にある時の戦闘は、これまでの戦いには見られなかった、ギャグ漫画のような〝自由〟な描写が現れるからです。
そして、今回特に注目したいのは、もう1つの〝腕力〟についてです。
さらりと触れられた〝ニカ〟の持つ〝腕力〟という性質ですが、実は〝魚人族〟が初めて登場した〝東の海〟編で既に描かれていたのです。
魚人と小人

〝魚人族〟が生まれながらにして「人間の10倍の腕力」を持つことは、既に〝東の海〟編のアーロンパークに向かう船の上で明かされています。
アーロンが「魚人は海中での呼吸能力を身に着けた人間の〝進化形〟」と評したように、彼らの生物としての能力の高さは当時から描かれていました。
しかし連載当初は、これが魚人という種族の〝強さ〟を象徴する表現と捉えられていましたが、〝ニカ〟の特性を考慮すると、また違った見方ができそうです。

〝魚人族〟の腕力の強さが彼ら特有の身体的特徴でないことは〝小人族〟からもわかります。
ドレスローザ編でゾロから刀を奪ったこの国の妖精〝トンタッタ族〟のウィッカはその腕力の強さでゾロを驚かせました。
彼らの持つ〝腕力〟とニカにはどのような関係があるのでしょうか。
奴隷と腕力

結論から言えば、彼らには「奴隷」という共通点があります。
〝魚人族〟は生まれながらにして差別階級に位置し、その類稀なる能力は人身売買市場において高値で取引されます。
〝小人族〟もまた、かつてのドレスローザ王国で奴隷として使役されていた過去を持っています。

そんな彼らのような奴隷達が太古の昔に信じたというのが「太陽の神ニカ」でした。
人を笑わせ、苦悩から解放するこの神は、奴隷達が自らを救ってくれると信じた〝解放の戦士〟です。
彼の与える〝自由〟と〝腕力〟とは、奴隷達を解放に導くための力です。
特に〝魚人族〟はこの〝太陽の神〟と強い関連があると考えられます。
〝聖地マリージョア〟にて種族の隔てなく多くの奴隷を解放した英雄フィッシャー・タイガーの率いた海賊団は〝タイヨウの海賊団〟でした。
本物の太陽の光が届かない海底深くに住む彼らの〝タイヨウ〟への憧れは、かつて奴隷達が信じた〝太陽の神〟への信仰と密接に結びついているようです。
太古の昔の奴隷達
太古の昔に〝ニカ〟を信じた奴隷達がどのような人々だったのかについては、まだ明らかになっていません。
ただ奴隷が存在したという事実から、当時にも彼らを支配する主人がいたことは疑いようがないでしょう。
奴隷と主人という関係は〝自由〟と〝支配〟というワンピースの根幹をなす対立構造を最も象徴しているともいえます。
かつて奴隷達に必要なのは〝腕力〟でした。ただ、それは奴隷として働き続けるための力ではなく、〝支配〟を逃れて自らを〝自由〟へと解放するための力です。
〝魚人〟と〝小人〟達にはなぜ〝腕力〟が与えられているのか―
作中にひっそりと仕込まれたこの謎が〝ニカ〟の生きた太古の時代、現代へと続く奴隷解放の〝意志〟を反映しているのではないでしょうか。

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