【ワンピース考察】サンジと〝新人類(ニューカマー)〟

ONE PIECE

新人類

  〝麦わらの一味〟のコック〝黒足のサンジ〟は、作中を通して新人類ニューカマーと呼ばれる人々と関わってきました。

 〝新人類ニューカマー〟とは、インペルダウンLEVEL5.5番地「ニューカマーランド」の女王(永久欠番)エンポリオ・イワンコフ曰く、「性別という境界ボーダーを超越した新しい人類」です。

 イワンコフは自らの〝ホルホルの実〟の能力によって性別を自在に操ることが可能であり、彼自身が〝新人類ニューカマー〟の先駆的存在でもあります。

 そして、これまで描かれてきたサンジと〝新人類ニューカマー〟の縁は単なる偶然ではなく、今後彼が対峙する可能性のある「性別を超越した存在」を示唆する要素として描かれているのです。

Mr.2ボン・クレー

Mr.2 ボン・クレー(出典:尾田栄一郎『ONE PIECE』集英社)

 サンジが最初に接触したのは、秘密組織〝バロックワークス〟のMr.2 ボン・クレーです。

 同組織は基本的に「Mr.とMs.の男女ペア」で任務にあたる構造を持っていますが、オカマであるボン・クレーはその枠組みに属さない、ペアを持たないエージェントでした。

 この点においても、作中において彼は「例外」として扱われています。
 サンジは本来、「女性には手を上げない」という〝騎士道精神〟を持っていますが、オカマ(女性的な特徴を持った男性)のボン・クレーはその対象から外れています。

カマバッカ王国

カマバッカ王国(出典:尾田栄一郎『ONE PIECE』集英社)

 〝シャボンディ諸島〟での一味完全崩壊の後、サンジはバーソロミュー・くまの能力によって「カマバッカ王国」へ飛ばされます。

 〝偉大なる航路グランドライン〟モモイロ島にあるこの王国は、その名の通り、乙女の心を持ったオカマで構成され、新人類ニューカマー拳法という独自の戦闘術が存在します。

 サンジはこの環境で二年間を過ごし、戦闘能力の向上とともに新人類拳法奥義〝花嫁修業〟の一つ「99のバイタルレシピ」を獲得しました。

スプラッシュとスプラッタ

スプラッシュとスプラッタ(出典:尾田栄一郎『ONE PIECE』集英社)

 〝シャボンディ諸島〟での再集結の後、一味は魚人島へ到達しますが、カマバッカ王国での二年間でサンジは女性への耐性を完全に失っていました。

 「人魚の入り江」でイシリーに抱き寄せられた彼は、命に危険が及ぶほどの大量出血(鼻血)を起こします。
 S型RHという希少な血液型を持つサンジに血を提供したのは、オカマの海賊スプラッシュとスプラッタでした。

来たるべき超越者

 以上の事例を踏まえると、サンジと〝新人類ニューカマー〟の関係は偶然ではないでしょう。

 これまで描かれてきた不思議な〝縁〟は、今後彼が対峙するどんな人物の存在を示唆しているのでしょうか。

クロコダイル(出典:尾田栄一郎『ONE PIECE』集英社)

 今後の対決が想定される人物として最も有力なのは、かつて〝バロックワークス〟を率いたMr.0サー・クロコダイルです。

 実はアラバスタ編において、男性の敬称(サー:Sir)を持つ彼は一度もサンジと対面していません。

Mr.プリンス(出典:尾田栄一郎『ONE PIECE』集英社)

 リトルガーデンでの電伝虫の会話や、アラバスタ王国での一連の妨害行動によって、クロコダイルはサンジが名乗った「Mr.プリンス」という存在と因縁を持つに至りました。
 しかし少なくともその当時、彼はその正体がサンジであることを認識していません。

 この関係性は、将来的な対峙に向けた布石だったと捉えることができます。
 クロコダイルと共に〝クロスギルド〟を結成したバギーとミホークがそれぞれルフィ、ゾロと対峙することを踏まえても、彼がサンジと相まみえる可能性は非常に高いといえます。

クロコダイルの〝弱み〟(出典:尾田栄一郎『ONE PIECE』集英社)

 そして、クロコダイルはイワンコフ〝弱み〟を握られていることなどから、かつて女性だった可能性が高い人物です。

 この点を踏まえると、彼の存在はサンジの「騎士道精神」と衝突する可能性を内包しています。

 つまり、彼のクロコダイルとの決闘は、サンジが「かつて女性だったクロコダイルを男性として認める」ことを意味するからです。

 そして、さらにもう一人、性別を超越したと思われる人物が世界の頂点に君臨しています。

ネロナ・イム聖(出典:尾田栄一郎『ONE PIECE』集英社)

 「世界の王」ネロナ・イム聖もまた、男性の〝天竜人〟に対する敬称である「聖」を持つかつて女性だった可能性を持つ人物です。

世界のてっぺんにある地獄(出典:尾田栄一郎『ONE PIECE』集英社)

 革命軍の参謀総長であるサボは〝聖地マリージョア〟にあるパンゲア城に侵入した際、「まさか世界のてっぺんに地獄があるとは」と表現しています。

 この構図は、かつて〝インペルダウン〟という「地獄」において、命の危機に瀕したルフィを救った〝仏〟としてのエンポリオ・イワンコフの対比として捉えることができます。

〝地獄に仏(オカマ)〟(出典:尾田栄一郎『ONE PIECE』集英社)

 マゼランの毒に侵され、死の運命にあったルフィの前にイワンコフが現れた第537話のタイトルは〝地獄にオカマ〟です。

 世界のてっぺんにある地獄にイム、つまり〝オカマ〟がいるのだとすれば、彼もまた、サンジと相まみえる可能性もあるのかもしれません。

〝騎士道〟

 〝騎士道〟とは中世ヨーロッパの騎士社会の中で重んじられた行動規範であり、その中には「女性に対する敬意や保護の精神」が含まれます。

 サンジがこれまで〝騎士道〟を掲げて女性との対決を避けてきたことで、「性別」という概念そのものに対する認識が作中で問われる可能性は高いといえます。

 この問題は個人の倫理にとどまらず、作品全体の主題の一つとしても位置づけられています。

 〝ワノ国編〟で描かれたヤマトや菊之丞(お菊)のような、男性の心を持つ女性や女性の心を持つ男性、さらには性別を転換した存在が描かれていることからも、このテーマが物語全体に通底していることがうかがえます。

 このような描写の積み重ねは、「性別」という枠組みが固定的なものではないことを示唆しており、最終的にサンジがどのような認識に至るのかが重要な焦点になるといえるのではないでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました