【ワンピース考察】〝金獅子のシキ〟はなぜ〝麦わらのルフィ〟に敗れたのか

人物

『STRONG WORLD』

『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』(出典:尾田栄一郎『ONE PIECE』集英社)

 『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』(ワンピース フィルム ストロングワールド)は、2009年12月12日に公開された漫画『ONE PIECE』の劇場版第10作目の作品です。

 『ONE PIECE』アニメ放送10周年記念作品として、劇場版初となる作者・尾田栄一郎氏によるオリジナルストーリーとして書き上げられました。

 本作は最終興行収入48億円、観客動員数約385万人を記録した大ヒット作で、公開から10年以上が経過した現在でも高い人気を誇っています。

 しかし、この映画は読者からある「違和感」が指摘されています。それは、かつての大海賊〝金獅子のシキ〟はなぜルフィに敗れたのか、という疑問です。

 今回はこの疑問に関する私なりの見解についてお話します。

ルフィvs. シキ

 皆さんもご存じのように、ルフィとシキの戦いは、ルフィの勝利に終わりました
 まずは改めて、海賊〝金獅子のシキ〟の強さについておさらいをしましょう。

 彼はかつて、〝海賊王〟ゴールド・ロジャーと肩を並べるほどの大海賊でした。
 ロジャー処刑前には海軍本部に単独で乗り込み、たった1人で当時の〝大将〟センゴクと〝中将〟ガープと死闘を繰り広げます。

 ここだけを見ても、シキが歴史的にみても海賊としてトップレベルの〝強さ〟を誇ったことが見て取れます。
 では当時のルフィの強さはどうだったのでしょうか。

 『STRONG WORLD』公開当時は頂上戦争編が連載されており、ルフィは当時の〝大将〟の力に圧倒されていました。これを見れば、違和感を感じるのも無理はありません。

 全盛期には〝大将〟と渡り合ったほどの実力を持つ〝金獅子〟がなぜ〝大将〟と圧倒的な実力差のあったルフィに敗北を喫したのか――。

 この疑問には、①ルフィの強さの過小評価②シキの弱体化が答えを示してくれます。

①本当のルフィの強さ

 この疑問が起こる根本的な原因は「ルフィの強さの過小評価」にあります。

 この問題は根深く、言い換えれば、多くの人がルフィのこれまでに戦ってきた相手を過小評価しています
 クロコダイル、エネル、ルッチ、モリアなど、これらすべての敵たちはルフィvs.シキに疑問を投げかける皆さんが思っている以上に強いです。

 例えば、クロコダイル。
 〝偉大なる航路グランドライン〟突入直後のルフィに敗れた彼について、〝七武海〟の中では弱い方という位置づけの方もいますが、とんでもありません。

 頂上戦争では〝新世界〟でルフィと戦ったドフラミンゴと張り合い、〝七武海〟撤廃後には19億の懸賞金がつくほどの大海賊です。

 当時のルフィとクロコダイルの強さを再評価すると、その後の敵たちの強さも違って見えてくるのではないでしょうか。

 エネルは作者の尾田宗一郎氏が青海にいたら5億は確実というほどの猛者であり、CP9史上最強と謳われるルッチ、かつてはカイドウと渡り合ったモリアもいます。

 もう1つの原因は、レイリーとの2年間の修行の過大評価です。

 ルフィはシャボンディ諸島でバーソロミュー・くまに飛ばされ、ルスカイナ島で2年の修行を行いました。
 3つの〝覇気〟を習得したルスカイナでの修行の成果は大きいですが、過去のルフィの基礎戦闘力は皆さんが想像している以上に並外れたものです。

 極端に言えば、ここで行われたのは「覇気の習得」と「能力の有効活用」といったところでしょうか。もちろん基礎戦闘力も向上していますが、どちらかと言えば〝新世界〟で戦うための〝術〟を磨いたという理解が正しいと思います。
 

②シキの弱体化

 もう1つはシキの弱体化です。

 頂上戦争時の〝白ひげ〟の強さが全盛期ほどのものではなかったように、シキもまた、想像以上に弱体化しています。
 彼の主要な弱体化要因は大きく分けて3つあります。

両足の切断

 センゴクとガープとの死闘の後、シキはインペルダウンに収監されますが、その後、自らの両足を切断して脱獄します。

 つまり、彼は両足を失ったことに加えて、〝桜十〟と〝木枯らし〟という名の2本の刀を扱う二刀流の剣士という戦法を失ったのです。

 自身の持つ〝フワフワの実〟の能力と刀を足にするという方法によって、新たな戦闘手段を生み出したことはさすがとしか言いようがありません。

 普通に考えて戦闘不能になるほどの重症です。

舵輪

 〝ロジャー海賊団〟とシキの率いた50の大艦隊との〝エッドウォーの海戦〟にて、絶体絶命のロジャーを救ったのは「嵐」と「シキの頭に舵輪が刺さったこと」です。

 医者の説明によれば、生きているのが不思議なほどの重症のようです。両足を失い、さらには頭に舵輪が刺さってしまったことによるシキの弱体化は想像に難くありません。

20年

 最後は「老い」です。
 シキは脱獄の後、世界に地獄を見せるという目的のもと、計画に20年もの歳月をかけてしまいました。

「白い怪物」と呼ばれた伝説の海賊エドワード・ニューゲートでさえ、海軍の英雄と呼ばれた伝説の海兵モンキー・D・ガープでさえ、自らの病気や老いに抗うことはできません。

 20年もの期間は本人の弱体化を考慮すれば必要な歳月かもしれませんが、本人の〝衰え〟〝麦わらのルフィ〟という障壁は、20年前には想定していなかったでしょう。

ルフィは強く、シキは衰えた

 そもそも勝負の世界は基礎的な戦闘能力だけでは決まりません。

 これはパンクハザードでルフィと対峙したモネも言っていたことです。戦闘方法や能力の相性や年齢、戦うための目的によって勝敗は大きく左右されます。

 ルフィがシキと戦った目的は当然、「仲間を守るため」です。
 もしかすれば、当時のルフィは10回中9回は負けるほどの力の差があったかもしれませんが、それを遥かに凌駕するルフィの〝意志〟と〝運〟があったのかもしれません。

 ここでは当時のルフィよりシキの方が弱かったというつもりはありません。

 彼らはそれぞれの目的のために戦い、そして決着したのです。読者にとっていろいろな考えはあれど、シキはルフィに負けたのです。

 もちろん物語を全て受け入れろとは言いませんが、事実をどのように消化するかは、読者である皆さんの読解力とワンピースという作品への理解にかかっているのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました