ビンクスの酒
ビンクスの酒はスリラーバーク編で初めて登場する唄で、歌詞が6番まで存在する。ブルックがスリラーバークでの戦いが終わった後、「昔の海賊たちはみんなコレを唄っていた」と発言しているため、ワンピースという物語にとって重要な意味を持っている可能性が高い。
この唄はどのような目的で作られたのか、込められている意味は何なのか、考察していく。
歌詞に込められた意味
最初に、この唄の歌詞を解読していこう。
「ビンクスの酒」の歌詞を見ると、この唄は船出をする人々の別れの唄であり、船出には「ビンクスの酒」をどこかに届けるという目的があったということがわかる。
1番の歌詞では夕暮れ時に鳥が空を飛んでいる情景が唄われているが、「夕日」は世界にこれから訪れる長い夜を予感させる比喩表現とも捉えることができる。
2番では、船出をする彼らが出向する場所が「つむぎの里」であることがわかる。つむぎ(紬)とは紬糸で織られた織物のことであり、和服の素材として多く使われていることから紬の生地でつくられた和服自体を指す言葉としても用いられる。
和服と聞くと「つむぎの里」とはワノ国のことではないかとも捉えられる。そう考えると1番の「輪をかく鳥」は光月家の家紋を暗に示しているのかもしれない。
3番では船出をする人々がドクロを掲げており、海賊であることがわかる。
4番、5番では別れを惜しみ、いつか来る夜明け(朝日)を信じて夢見る様子が描かれている。
6番には、「笑い話」という表現が登場する。ワンピースで「笑い話」といえば、海賊王だけが確認することができた最後の島「ラフテル」が想起される。ラフテルはジョイボーイの笑い話にちなんでロジャーが名付けた名前であり、「Lough Tale(笑い話)」と綴られる。
「空白の100年」と「ビンクスの酒」
以上の点を踏まえると、勘のいい人であれば「ビンクスの酒」と「空白の100年」が密接に関係している可能性があることは容易に想像できるだろう。
「空白の100年」の戦争に敗北した「ある巨大な王国」の民たちは、いつか遠い未来に訪れる「世界の夜明け」を信じ、次世代に意志をつなぐために歴史を石に刻む者、海賊として生きる者などそれぞれが別々の生き方をせざるを得なくなった。
海賊として海に出る者たちの船出を、つむぎの里で見送る唄が「ビンクスの酒」なのではないだろうか。
そうだと仮定した場合、「ビンクスの酒」とはいったい何のことで、彼らは何のためにそれを届ける必要があったのだろうか。
ビンクスの酒とはいったい何なのか
ビンクスの酒が何であるかは、今のところわからない。
なぜならビンクスが人物名であるのか、産地や特定の地域名を表しているのか、もしくはそれ以外の何かなのかはっきりしていないからだ。
ビンクスの酒は目的の地へ届けられたのだろうか。ビンクスの酒という唄を作り、後世まで唄い継ごうとしていたのなら、未だ届けられていない可能性もある。
最初に「ビンクスの酒」を唄った彼らは、自分たちの手でビンクスの酒が届けられないと知っていながら、いつか訪れる世界の夜明けのために唄に願いを込めたのかもしれない。
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