「自由」と「支配」
ワンピースでは「自由」と「支配」が重要な対立関係として描かれており、〝天竜人〟の「支配」と〝Dの一族〟の「自由」の対立は〝最終章〟で決着すると考えられる。
これは〝空白の100年〟における勝者「20の連合国」と敗者「ある巨大な王国」の数百年の時を越えた戦いともいえる。
このような対立構造は「正義」と「悪」・「神」と「悪魔」としても描かれ、これらはすべて立場や見方によって姿を変えるもので、必ずしも二極化した単純な対立構図では描かれていない。

ワンピースにおいて最も重要なテーマの1つといえる「自由」と「支配」の対立は、実はドレスローザ編で縮小された構図が描かれた。
ドレスローザ編から〝最終章〟が導かれるという考察を行う上で、ドレスローザ編における「自由」と「支配」の対立、そして〝天竜人〟と〝Dの一族〟の運命と結末は非常に重要である。
〝Dの一族〟vs. 〝天竜人〟
マリンフォード頂上決戦において、死の間際の〝白ひげ〟は未来に起こる〝巨大な戦い〟について言及した。

未来に起こる巨大な戦争は〝Dの一族〟vs〝天竜人〟という構図になるといえるだろう。この対立構図は既にドレスローザ編で登場している。
ドレスローザにおける戦いは、
〝ドンキホーテファミリー〟vs〝麦わらの一味〟&〝ハートの海賊団〟
という構図で展開された。
〝堕ちた天竜人〟ドンキホーテ・ドフラミンゴ率いる〝ドンキホーテファミリー〟に〝Dの一族〟モンキー・D・ルフィとトラファルガー・ロー率いる海賊同盟が戦いを挑んだのである。
つまり、ドレスローザ編そのものが〝天竜人〟vs〝Dの一族〟という最終戦争の縮小版として描かれたと考えられる。
最終的に決戦を制したのは〝D〟の名を持つ2人の船長だった。
ドフラミンゴとロシナンテ
ドレスローザ編では〝天竜人〟の血を引く兄弟ドフラミンゴとロシナンテが登場する。
彼らは800年前に「世界政府」を創り上げた「創造主」の血を引く存在でありながら、それぞれが「支配」と「自由」の象徴として描かれた。
ドフラミンゴは「支配」の象徴であり、〝イトイトの実〟の能力者で人を操る。リク王に悪事を働かせ、国民を欺くことでドレスローザの国王となった。

一方、弟のロシナンテは兄の暴走を止めるため、海兵としてファミリーのスパイとして活動した〝天竜人〟の血を引く彼は〝D〟の名を持つローに「命」と「自由」を与えた。

この〝天竜人〟の兄弟の両極的な対立は今後の物語において重要な意味を持つと予想される。
〝最終章〟で描かれる〝巨大な戦い〟と対応関係にある頂上戦争は、エースとルフィという2人の〝D〟の名を持つ兄弟の物語だった。
そして、ドレスローザ編ではルフィとサボという兄弟が描かれたことからも、「兄弟」という関係性は今後も重要になるといえるだろう。
〝思想〟や〝信念〟の対立が歴史の運命を動かしてきたことは〝天竜人〟と〝D〟の対立の歴史において重大な意味を持つ。
トラファルガー・ロー
そして、この2人の〝天竜人〟と深く関わった〝Dの一族〟トラファルガー・ローも〝最終章〟における最重要人物の1人である。

ローが〝D〟の名を持つことが明かされたのはドレスローザ編であり、ワーテルという「忌み名」を持つことも明かされた。
ローは「トラファルガーの海戦」と「ワーテルローの戦い」という実際に起こった歴史上の戦争が由来の名前を持っており、これはいずれもナポレオンが敗北した戦いである。
つまり、トラファルガー家は「巨大な王国」の敗北の要因に深く関わっている可能性がある。
特に「ワーテルローの戦い」はナポレオン最後の戦いであり、この戦争の敗北によって彼はセントヘレナ島に流され、その地で命を落としている。
つまり、〝空白の100年〟に実在したトラファルガー家の人物(おそらくトラファルガー・D・ワーテル)は戦犯である可能性が高く、それが原因で「忌み名」が付けられたと考えられる。
ローの〝最終章〟における活躍は一族の汚名を晴らすという運命をも背負っている。
ドレスローザ編から〝最終章〟を導く


〝最終章〟の最大の敵が〝天竜人〟であるように、ドレスローザ王国を支配した〝ドンキホーテファミリー〟と世界を支配する「世界政府」は対応して描かれている。
特に顕著なのはシュガーとイム様で、彼らは国王ドフラミンゴの支配と「政府」の支配における最重要人物だった。
〝天竜人〟の支配を象徴する〝ドンキホーテファミリー〟と〝Dの一族〟の自由を象徴する「海賊同盟」の戦いはドレスローザ編から導かれる〝最終章〟の根幹を担う要素である。
加えて、多くの国・組織・種族、そして〝黒ひげ海賊団〟が関わっているという類を見ない物語が展開されていたことだけでもドレスローザ編の異質さと重要さを理解いただけるのではないかと思う。
「ドレスローザ編から導く〝最終章〟」。次回は「革命」について考察する。
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